理事長あいさつ

「家族会のこれから」

ようやく社会全体がコロナ禍以前の賑わいを取り戻しつつあるようですね。

人はそれまで当たり前にある「幸せ」を、失って初めてその大切さに気付くという風に言われていますが、この4年にわたるパンデミックによって、私たちは様々な制限を受けた生活を余儀なくされてきましたが、今改めて「普通に暮らせる幸せ」を大切にしたいと思います。

オンラインで行われていた様々な集まりや研修なども、会場に出向いての参加に戻りつつあり、人の息遣いや意見のやり取りの雰囲気を感じながらの参加は、移動時間や交通費などを考慮しても、意義あるものに感じます。

中でも、私が5月26日に、日本高次脳機能障害友の会を代表して参加した「日本障害者協会」総会ですが、午後の政策会議への出席が、とても勉強になりました。普段は高次脳機能障害の当事者・家族、支援者の皆様との関わりがほとんどで、「障害福祉」全体への視点が欠けがちなので、当事者団体と関係団体61団体が参画している同団体が取り組まれている問題提起や積極的な活動は常日頃より私の視野を拡げてくれています。

今回は、昨年8月国連で行われた初の対日審査とそれを受けての9月の総括所見(勧告)の内容をどう実質化していくか、また各団体からの報告では多種多様な障害の問題やこれからの取り組み方など、中身の濃い学びの場となりました。

ところで、皆様は今年2月末ごろ、東京都八王子市の私立の精神科の滝山病院で起きた看護師による患者暴行事件の報道を覚えていますか? この事件をテレビの報道番組で見て、とてもショックを受けたという、高次脳機能障害の息子さんを持つご家族から電話を頂きました。10 年ほど前の交通事故でそれまでの順風満帆な人生が一変してしまった息子さんは、苛立ちを抑えることができず、暴言や時に家族に向けられた暴力により、家族離散の結果となってしまいました。記憶障害等の後遺障害により、復職もうまくいきませんでしたが、それでも現在は特例子会社で働き、何とか一人暮らしを維持しているそうです。しかしやはり時には周りとトラブルがあり、婚活サイトで知り合った女性とは、周辺住民によって警察に通報されてしまうほどの大事になってしまったと、離れて暮らすこのご家族は嘆いておられました。そして、滝山病院での事件を「息子はこの先同じような境遇になるに違いない」と結び付けておられました。悲観的過ぎるご家族に、私からの「きっと大丈夫」という楽観的な慰めの言葉は、何の役にも立たなかったに違いありません。

しかしながら、だからこそ現在、全国の家族会とともに日本高次脳機能障害友の会が目指しているのが「高次脳機能障害者支援法」です。法律に基づく支援が広がることで、この障害へのさらなる理解が深まり、障害を理由とした不利益を除いていくことができ、当事者も家族も、この先の社会に希望をもって生きていくことができるのです。

全国に広がる高次脳機能障害の当事者会や家族会もしくは支援者団体の規模は決して大きくはありませんが、大同団結していきましょう!

理事長 外崎 信子

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