観測史上最も暑く、長く続いた今年の夏が遠のきつつあり、遅まきながら色味を変化させていく空や木々や山々に秋の訪れを感じられるようにもなり、ほっとされている方も多いと思います。そして何よりコロナ禍前の様な集まりや人の動きが活発になってきていることを肌で感じることも多くなってきました。
10月1日、東京都内で開催された日本高次脳機能障害友の会の全国大会には、全国から多くの当事者家族をはじめ、関連する団体の皆様にもご参集いただきました。熱気あふれる雰囲気の中で滞りなく閉会し、「高次脳機能障害支援法」制定を目指した動きが今後一段と進むことを感じさせる大会となりました。
私たち家族会が今目指しているのは「理念法」というもので、一般的には、社会問題や政策課題などに対する国としての理念が示され、国や地方自治体、企業などに問題解決に向けた取り組みを促す法律で、罰則規定などがない、「基本法」とか「推進法」というような名前で呼ばれているような法律です。そこから一歩が始まると言っても過言ではないのです。
数年前、自立した生活を希望している当事者とアパートを一緒に探した時、障害があるのを告げたら入居を拒絶されたことがあります。こういうケースはいまだに多く聞きます。障害者に対する一般社会の見方、受け止め方はまだ厳しい状況である事を痛感します。
国の福祉施策として障害者の地域移行、自立と地域共生が声高に叫ばれているのに、近隣とのトラブルが起こった場合のリスクとか保証協会が通らないかもとの理由で断られるのは納得がいかず憤慨した記憶があります。
高次脳機能障害を持つ当事者の中には、本人が必要と思うサポートさえ入れば、自立生活が可能な人がとても多くいると思います。グループホームだけが選択肢ではない、と思っていたところ、まさに思い描いていたような活動をされている不動産会社の社長に先日お会いしました。こちらの会社は2019年より神奈川県の「住宅確保要配慮者の居住支援法人」に指定され、住宅の確保が難しい高齢者、障害者、シングルマザーの方の住まい探しのお手伝いや入居後の“見守り支援等”を行っている会社だそうです。
この「居住支援法人制度」は住宅セーフティーネット法などによって整備された制度で、国土交通省のホームページ上に国内の法人一覧が掲載されています。 あったらいいなを追いかけていったら、意外と身近にしっかりあって、実は自分が知らなかっただけだったというオチでしたが、地域には当事者家族が知らない(知らされていない)有益な情報が沢山あるのかもしれません。よく整備されていても、皆に周知されず、生かされないのでは、絵に描いた餅になってしまうので、是非とも生かして、地域共生をすすめていきましょう。
理事長 外﨑信子